本論『ものまねボイトレ』
第5章は、自分にふさわしいフォームをモノマネで見つけよう、といった内容を述べています。
第5章「すべての身体操作は、自分にふさわしいフォームを探し求めている」
「良い声質」とは、その人に合ったいちばんふさわしい声のことですが、では、「声質」とは何でしょうか?
それはフォームの顕在化です。
フォームとは、発声様式のことです。
口腔など、音の反響する場所・形・角度などが変化すると、声質が変わってきます。
フォームが変わると声が変わるのです。
そのフォームを、意図的に、随意に発現できるようにすることが、身体操作でよく使われる用語である「フォームを固める」ということになります。
たとえば、野球の素振りです。
素振りは、フォームを意識しないでおこなうなら、何百何千回やろうとも無意味です。
たまに、チカラまかせにバットをふってる選手がいますが、筋トレ以外の意味はないでしょう。
野球がじょうずになるどころか、ヘタになる可能性さえあります。
といいますか、「すべての身体操作はフォームを固めることが目的だ」とも言えるかもしれません。
たとえば習字において、思ったように線をえがくことは、フォームを抜きに語ることはできないでしょう。
正座をし、背筋を伸ばし、半紙に正対する。
たぶんこれは、習字をきわめれば、きわめるほど、よりいっそう大事なことになってくる筈です。
野球も、100メートル走も、楽器演奏も、同じです。
すべての身体操作は、究極的にはフォームを固めるためにある。
そう言い切ってもまちがいないでしょう。
別の表現をするならば、自分にふさわしいフォームを見つけ出せた人が「一流」なのです。
身体操作の分野においては、これが定理だと思います。
一般的には、一流だから自分にふさわしいフォームを見つけ出せたと考えられているかもしれません。
でも、実際は、逆です。
かんちがいしやすい所ですので、気をつけてくださいね。
野茂投手もイチロー選手も、一流だからフォームを見つけたのではありません。
フォームを見つけ出せたからこそ、一流選手になれたです。
ぼくは、そう考えています。
「歌」も身体操作のひとつですから、ベストなフォームを見つけ出せるかどうかが、最も重要な課題です。
ところが、喉(ノド)は、外から見えません。
視覚的にフォームを確認することができないのです。
でも大丈夫。
フォームの変化は声質に現れるのでしたよね。
口腔など、音の反響する場所・形・角度などが変化すると、声質が変わってくるのです。
つまり、ベストなフォームを見つけるということは、ベストな声質を見つけ出すことと、イコールだと言えます。
ですのでぼくたちは、良いフォームで歌えているかどうかを、良い声質で歌えているかどうかを判断材料にしていけばいい、ということになります。
意識を声質のほうにシフトしていい、ということですね。
強くフォームを意識する必要がない、とも言えます。
さて、野球にせよ、サッカーにせよ、身体操作において、フォームをゼロから作り出すことは可能でしょうか?
そんなことができるのは、数十年にひとりといったレベルの、天才だけですよね。
ふつうの人には不可能です。
ほとんど多くの人は、モノマネから始めるのです。
えっ?
モノマネなんて、低レベルですか?
でも、「学ぶ(まなぶ)」の語源は「真似ぶ(まねぶ)」だとも言われています。
モノマネをあなどっては、いけません。
たしかに人は天才にあこがれます。
自分も天才じゃないかと勘違いしがちです。
でも、とうぜんのことながら、ほとんどの人は凡人です。
その事実を知ったとき、人はどのような行動をとるでしょうか?
ぼくは野球が好きだ。でも、ぼくは天才じゃなかった。どうしよう?
野茂投手やイチロー選手は、あきらめませんでした。
練習し、自分をみつめ、自分にいちばんふさわしいフォームを探し出しました。
だからこそ一流選手になれたことは、先ほど申し上げましたよね。
あなたは歌が好きです。でも、天才じゃなかった。。どうしましょう?
あきらめますか?
でも、どうせならこのWebサイトを参考にして、モノマネしてみましょう。
徹底的に学んで(まねんで)みましょうよ。
野茂投手やイチロー選手みたいに、一流になれるかもしれないのですから。
声練屋やすべぇ(こえねりや・やすべぇ)
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