本論『ものまねボイトレ』
第3章は、あなたにとっての良い声とは、あなただけのもの、といった内容を述べています。
第3章「良い声とは、その人に合ったいちばんふさわしい声」
歌を聴いて感動するのは、良い声質で歌われるからだ。
そう考えていることを、前章で申し上げました。
では、「良い声質」って何でしょうか?
今の若い人は、どうなのかなぁ?
あるていどの年齢の人にとって、「良い声質」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、オペラのような歌声じゃないだろうか、と思います。
ぼくらが子供のころは、浪曲とか、演歌「女のみち」とか、ちまたにはけっこうダミ声があふれていました。
でも、なぜか教育現場では、ああいうダミ声を否定していたのですよね。
オペラのような、まぁ、なんといいますか、伝統的な日本の発声法からは程遠い歌い方が、学校内では好まれていたのです。
たぶん、時代が、そうだったのです。
日本的なものは全部ダメ。欧米のものは全部すばらしい。
そういう時代だったのです。
ですから、あるていどの年齢の人は、「良い声質」とはオペラのような歌声だ、と考えてしまいがちです。
そういう癖がついてるんですね。
でも、このWebサイトで言う「良い声質」とは、オペラのような歌声とは全然ちがいます。
気をつけてくださいね。
たぶん、今の若い人は、きっと自由な教育を受けてきたのでしょうから、こういった悪い癖は、ないことだろうと思います。
素直に、「良い声質」とは何か? を受け入れられることでしょう。
そう。
このWebサイトで言う「良い声質」とは、その人に合ったいちばんふさわしい声のことです。
ひょっとして、こんな人が存在するかもしれません。
カラオケの機械採点では、そこそこ良い点数を出すけけど、聴いている人からは、なんだか物足りないって言われる。
バンドを組んでボーカルをやったら、ヘタではないんだけど、パンチがないとか言われる。
悪くないんだけど、なんか違う。
たぶん、それは、その人にとって、ふさわしい声質で歌っていないからです。
借り物のような声で歌っているからです。
自分にピタッと合った声で歌えば、聴く人の心が動くはずです。
少なくとも、このWebサイトでは、それは自明の事実だと考えます。
では、あなたにとって、いちばんふさわしい声とは?
ひょっとしたら、それは、ダミ声かもしれません。
あるいは、アニメ声かもしれません。
ハスキーボイスかもしれませんし、ドウマ声かもしれません。
一周回って、オペラ声かもしれません。
それはぼくにはわかりません。
わかるのは、あなた自身だけです。
なぜならばそれは、あなただけの声だからです。
まちがっても、他人の意見をうのみにしないでくださいね。
オペラのような歌声が良い声だ、という人物は、日本には数多くいます。
特にボイトレ界には、たくさんいます。
でも、正直に言って、日本人はオペラのような声が嫌いです。
そうでしょ?
あなたも、あなたも友達も、オペラって聴きに行きますか?
なのに、なぜか世間では、オペラのような声が良い声だ、なんて俗説が流布しているのです。
こういった他人の意見に、まどわされないようにしてください。
あるいは、アニメ声。
最近は声優ばやりで、アニメ声がモテはやされています。
ある種のムーブメントでしょう。
これに乗っかることも、商業的な手法としては、アリなのかもしれません。
でも、アニメ声があなたにふさわしいわけではないのだったら、やっぱりやめたほうがいいと思います。
流行だから、とか、みんながやっているから、とか、そんな理由で自分の声を選んでは、いけないと思うのです。
時代の波というのは、かなり巨大ですから、個人であらがうことは困難かもしれません。
でも、できるだけ流されないようにしてくださいね。
声練屋やすべぇ(こえねりや・やすべぇ)
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